(今度の定例は26だったよね)
「……い」
(てことは、21日までに草案を作れば間に合う…か)
「!」
「…はい?」
「馬鹿動くな!」
通常モードより2割増の鋭い声と
背伸びした指先が目的のものに触れたのはほぼ同時のことだった。
chrysalis
バサバサバサと埃もろとも落下していく冊子の数々が
自分のつま先から数センチの距離に積もっていくのをはただ呆然と見送っていた。
「………」
「…こ、わ」
なんとも判別のしにくい溜息を近くに感じながら
は今更ながらの感想を述べる。
ちらっと見た限りではそんなに物が乗っているとは思わなかったから
脚立を使うまでもないと高をくくっていたのだ。
甘い判断だった。
「…反射神経くらい鍛えろよ」
うんざりした声が頭上から降ってきて、
は改めて自分の体勢のおかしさに気づいた。
(重心が、うしろ?)
「おい、立ったまま寝てんじゃねぇだろうな」
訝しげな声の主がを呼ぶ。
「あ、とべ?」
「他に誰がいるよ」
そうだ。
先程からこの部屋で業務をこなしていたのは副会長の自分と会長の跡部。
そしてこの後ろへいったままの重心を支えているのは自分じゃなく…
「っ、」
「…こんな時間だし集中力が切れるのも分かるが…」
血液がザァァと引く音がして
背後の彼にせめて詫びの言葉をと振り返ろうとしたけれど
― マジで心臓に悪い
夜のガラスに映された肩口に沈むその表情に
は動きを縫いとめられてしまった。